あまのじゃく



彼女とは、幼い頃にけんかをした。
原因はもう覚えていない。
ただ、その事実だけが後々まで尾を引いて、私たちの仲はお世辞にも良いものとは言い難かった。
それなのに何故か今は、親友とまで言えるような仲になっている。
それは多分、彼女が私の興味を引く存在だからなのだ。
初めて出会ったあの日も、ばったり出くわしてはそっぽを向いていたあの頃も、

そして、不覚にも彼女に恋をしているかもしれない今も。

あなたは知らないでしょう?
私が想いを寄せていることを。
その想いを持て余している事を。
そしてあなたの言葉一つにさえ振り回されている事を…。




「聖」

中庭で寝転がってる聖に声をかける。

「ああ、江利子。どうしたの?」
「蓉子が呼んでた。全員集合ですって」
「ええ〜?めんどくさいなあ…」
「ほら、さっさと起きて」
「…」
「聖?」

聖は起きあがろうとしない。代わりに両手を私に向かって伸ばした。
…憎らしいほどの笑顔で。

「…起こして?」
「何バカな事言ってるの?早く起きて。蓉子にどやされるのなんかごめんだわ」
「嫌。起こして」

なんて強情なんだろう。結局、面倒な事になるのを避けるために私が折れた。

「…」
「っうぁ、痛っ!」

ムシャクシャしたから、思い切り腕を引っ張ってやった。

「ちょっと江利子、もう少し優しく出来ないの?」
「…出来るけど、したくないわね」
「何よぉ、それ」

「私は、聖には優しくなんかしてあげないって、決めているのよ」
「え、どうして?」

きょとん、と私を見つめる聖。
それが、あまりに間の抜けた顔だったものだから、思わず笑ってしまった。



「私はね、あなたのことが世界で一番嫌いなのよ」

笑ってそう言ってやった。


嫌いだからこそ気になって、いつの間にか好きになって、好きだからこそ嫌いになって。
好きで好きでしょうがないなんて恋よりも、よっぽど私らしいじゃないか。



あとがき
書き難いけど好きな江利子聖。
素直な恋もいいけど、ひねた感じのも良いと思いませんか?


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