明日すら遥か遠く



このまま時が止まってしまえばいいのになんて、そんな無茶なことをこの瞬間になるといつも思ってしまう。
明日になればまた会えるって、ちゃんと分かっているのに。



「…祐巳?」
「あ、はい」
「どうしたの?元気がないようだけれど。何かあったの?」
「いえ、何でもないです」

とびきりの笑顔で答える。
『お姉さまとお別れすることが寂しいんです』なんて、言えないから。
きっと『明日になればまた会えるでしょう?』と言われるだろうし、私自身そう思う。

「本当に、何でもないのね?」
「はい」
「それなら、良いわ」

それじゃあ、と 別れを切り出すのはいつもお姉さま。
その言葉に私は、今日の終わりを突きつけられた気分になってしまう。
明日はまだ、ずっと遠くにあってここからは決して見えなくて。

「ごきげんよう、祐巳」
「ごきげんよう、お姉さま」

二人別々の方向へ歩き出すとき、名残惜しく後ろ姿を追ってしまうのは、一瞬でも長く傍にいたいと思うから。


「会いたくて会いたくて、私の毎日がもどかしいこと、お姉さまは知らないでしょう?」



見えなくなった背中に向けた言葉は、夕陽に染まる街中にかき消えた。



あとがき
この二人の話を書くの初めてです。
一気に書けたんだけど、短い・・・。


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