幸せの在処 side E
『交じることのない世界』
そう称された関係は、
きっと私とあなたにも当てはまるんでしょうね。
手を伸ばせば壊してしまうかもしれないから、
だから私たちは誰もが身動きとれずにいる。
「いつまで経っても、あなたは臆病なままなのね」
「・・・そうよ、でもこれでいいの」
悲しげな笑みに、
少し苛立ちを覚えた。
「・・・そんな嘘ものの幸せなんか、私は要らない」
そんなのイラナイ。
嘘もので気を紛らわせるくらいなら、
いっそ何も要らない。
「ねえ、今何て言ったの?」
「・・・・・・」
「・・・」
「あなたがそれでいいなら、私が言うことは何もないのよね・・・」
結局のところ私は、
手を伸ばす勇気も持てず、
妥協も出来ず、
諦めることすら出来ないだけなのだ。
「・・・臆病者は私の方、か」
呟いた言葉は、
風に運ばれてすぐに消えてしまった。
あとがき
江利子さまサイド。
でも、江利子さまなら潔く諦めそうな気がしてならない今日この頃。
初出 2004.10.2 ポケットの中のメモ帳
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