待ち合わせ



待ち合わせの15分前、駅に降り立った。
私の待ち人は、もちろんまだいない。

「いい加減、私も学習しなくちゃいけないのかしらね・・・」

ぼやきながら腕時計に目をやる。
時間はちょうど約束の10分前。
彼女はいつだって、時間通りになんかやって来ない。
長い付き合いだ、そんなことくらいはとっくに知っている。
分かっていて、それでも早く来てしまうなんて、学習云々の問題ではなくもうどうしようも無いのかもしれない。

『ああ、早く。早く来て』
約束までは後5分。
時計を見る間隔は間違いなく短くなっている。
待ち合わせの時間を決めたメールはもう何度も見返した。

時計の針がまたひとつ、動く。
その時、正午を告げる鐘が鳴る。
彼女も同じ音を、どこかで聞いているだろうか。
その音を、一体どんな想いで聞いているのだろうか。

きっかり12回、鐘が鳴る。
鐘が鳴り終わると、駅前広場は人を吐き出した。
先ほどまでいた人々はみな、待っていた『誰か』と共に消えてしまった。

駅前広場にひとり、ぽつんと立ち尽くす。
約束の時間からはもう5分。
私の『誰か』はまだ来ない。

『きっとまた、バタバタ走りながらやって来るんだわ』

いつもみたいに息を切らせて。
肩で息をしながら、「待たせてごめん」って言うのだろう。
きっとあなたは、いつもの笑顔で。

「全く、早く来なさいよ」

そして私はいつものように、「待ちくたびれたわよ」って言ってやるんだから。



あとがき
2年放置していたものを引っ張り出して、手直しして、アップです。
この2人の待ち合わせってこんな感じかなあと妄想。


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